2019/8/4
渋野日向子が全英オープン女子で優勝を飾った
まだ20才という若きホープが「42年振り2人目」となる、日本女子のメジャー大会優勝を成し遂げ、歴史にその名を刻んだ
その光景は「異様」であった
3日目のホール間の移動中の出来事である
沿道にいた、おそらく現地の少年に頼まれ、
「着けていたグローブを外し、サインをしてプレゼントする光景」
がテレビ中継に映し出された
目下トップ争いの渦中にいた渋野であるが、嫌な顔1つせず、なんなら少し歩みを戻して、少年に近寄ってサインをしたのである
「普通の」人間であるならば、早く次のホールに着き、ティーイングエリアや風などの状況を確認し、コース戦略を練りたい所であろう
それは渋野も、帯同するキャディ(コーチ)もそういった気持ちはあったはずであろうが、渋野は「少年を断る」という選択を取らなかった
更には「現在着用中のグローブをあげる」というワガママも受け入れている
私はこの出来事に
「日本人としての誇り、おもてなしの精神」
を思った
日本人がメジャー大会で勝てない理由
日本人に対し、
「序盤良くても、後半まで持たずに失速して勝てない」
といったイメージが拭えないのは私だけではないと思う
正直な所、
「今回もまた後半で失速してしまうんじゃないか」
というマイナスイメージが拭えずにいたが、終わってみればそれはすべて杞憂となった
「渋野は今までの日本人とは違い、なぜ優勝できたのだろう?」
私なりの答えを出すとそれは
「日本人を貫いた」
という一言に尽きるのではないだろうか
「メジャーで勝つ人は感情を表に出さない」というイメージが私にはある
バーディを取っても、ボギーを叩いても顔一つ変えず淡々とプレーを進め、最後の優勝パットを決めた瞬間から感情を爆発させる、というよく見る光景である
日本人は「空気を読む」「出る杭は打たれる」の精神が根強く、どうも「型にはめてしまう」傾向がある
メジャー大会での立ち振る舞いもその例となり、日本で培ってきた自分のスタイルを貫くのが難しいのではないだろうか
「スマイルシンデレラ」
2日目が終わった辺りで、現地のメディアから渋野はそう呼ばれて人気を得た
言葉の通り、プレー中の笑顔を絶やさず、終わった後のサインや写真に積極的に応じる姿勢が、海外メディアの目に止まったのであろう
渋野は日本でプレーしている時からずっと笑顔がトレードマークであり、とりわけメジャーだからそうしてるという訳ではないとは思う
しかし、言っても「メジャー大会」である
味わったことのない緊張もあったはずであるが、渋野は自分のスタイルを貫いた
「スマイルシンデレラ」という異名は「常に笑顔でいなければならない」という枷(かせ)になったはずだ
しかし、渋野はその枷を突破し「笑顔のまま」優勝を迎えた
それは「進化」とも取れた
新人類は自分のスタイルを貫きながら、進化していった
42年前に同大会で優勝した樋口久子プロが、解説で渋野のことを
「新人類」
と表現した
「並みの人間であれば、初めてのメジャー大会で自分の力を出せるはずがない」という人類の考えを「超越している」ということを表しているのであろう
「笑顔」や「攻めの姿勢」といった渋野の心に宿る信念を貫き、ひいては
「日本人が日本人でいること」
を貫いたことが優勝を呼び寄せたのではないだろうか
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